ファーマ行政書士事務所ブログ(薬事45)

前回までの「薬事法の変遷」シリーズでは、1943年の旧々薬事法の誕生から、戦後の1948年薬事法、そして現在の薬機法の基礎となる1960年薬事法の制定とそこから現代に至るまでの法改正の歴史について解説してまいりました。今回からは新シリーズ「ケーススタディで学ぶ薬事許認可のリアル」をスタートいたします。

本シリーズでは、これまでの歴史や法律の知識を土台としつつ、実際に事業者の皆様がビジネスを展開する上で直面する実務上の論点に焦点を当てていきます。第1回のテーマは、「自社ブランドの化粧品ビジネス参入と『化粧品製造販売業許可』」です。

新規参入を検討される際の判断基準を整理するため、以下に制度を説明するための2つの仮想事例を設定します。

  • A社: 自社ブランド化粧品の販売のみを希望する企業
  • B社: 自社で品質・安全管理を統括して製造販売業者になりたい企業

1. 「発売元」と「製造販売元」の違い

OEM(受託製造)を活用して自社ブランドの化粧品を販売する場合、自社が必ずしも製造販売業許可を取得しなければならないわけではありません。適法な製造販売業者が市場出荷した化粧品について、自社が販売のみを行う場合、化粧品の販売そのものに薬機法上の許可や届出は不要です。

つまり、A社のように販売に専念する場合、容器・外箱等の表示において自社は「発売元」となり、OEM側等が「製造販売元」となる仕組みでビジネスを展開することが可能です。ただし、OEMは受託製造という取引形態を表す言葉であり、委託先が必ず製造販売業許可を持っているとは限りません。自社ブランドを立ち上げる際は、委託先が持つ許可の種類(製造業許可と製造販売業許可は別制度です)と、誰が製造販売業者になるのかを確実に確認する必要があります。

一方、B社のように自社が「製造販売元」として市場への責任を担う場合には、自社で「化粧品製造販売業許可」を取得しなければなりません。

2. 自社が「製造販売業者」となる場合の3つの検討事項

自社で許可を取得して製造販売業者になる場合、以下の要件を満たす必要があります。

① 人的要件(三役の確保)

製造販売業では、総括製造販売責任者、品質保証責任者、安全管理責任者の適格者を確保する必要があります。

総括製造販売責任者の資格要件は、概略以下の通りです。

  • 薬剤師
  • 旧制中学・高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する専門の課程を修了した者
  • 上記の学校で、薬学又は化学に関する科目を修得した後、医薬品・医薬部外品・化粧品の品質管理又は製造販売後安全管理に関する業務に3年以上従事した者
  • 厚生労働大臣が同等以上の知識経験を有すると認めた者

また、品質保証責任者と安全管理責任者についても、販売部門への所属など業務の適正な遂行に支障がある者を避ける要件があります。必ずしも全てを新規雇用する必要はなく、代表者や既存社員が要件を満たす場合もあります。化粧品においては、業務に支障がない等の条件の下で三役の兼務が認められる場合もあります。

② 体制要件(GQP・GVP体制の構築)

品質管理(GQP)と安全管理(GVP)の体制構築が求められます。

  • GQP: GQP省令に基づき、品質管理業務手順書を作成する義務があります。
  • GVP: 化粧品に適用されるGVP省令では一律の手順書作成義務はありませんが、安全管理情報の収集、検討、安全確保措置などの業務と記録保存を実施する体制を整える必要があります。業務を確実に運用するため、手順を文書化しておくことが望まれます。
③ 事務所と文書・記録の管理体制

化粧品製造販売業の事務所については、製造所に適用される薬局等構造設備規則による構造設備基準が、そのまま適用されるわけではありません。一方、業務を適切に行う場所と、手順書・記録を管理できる体制は必要です。具体的な業務の実態、使用できる場所、記録管理方法については、申請先の自治体に確認することが重要です。

3. 許可取得から発売までの手続きと「サイエンスの視点」

製造販売業許可を取得しても、それだけで製品を発売できるわけではありません。 通常の、製造販売承認を要しない化粧品についても、製造販売に先立ち、品目ごとの製造販売届出が必要です。薬用化粧品など医薬部外品に該当する場合は、別の許可・承認体系となります。さらに、自社で包装・表示・市場出荷前の保管等を行う場合は、製造業に関する許可の要否も確認する必要があります。

また、成分が化粧品基準に適合しているかの確認には、禁止成分の有無だけでなく、配合量や使用部位・使用方法による制限、防腐剤・紫外線吸収剤等の使用可能成分と配合条件、不純物等も含めた原料の安全性などを総合的に評価する必要があります。必要な情報と専門知識を確保し、組織として適合性・安全性を判断する体制が重要です。

4. まとめ:自社の事業戦略に応じた選択

仮想事例の結論として、以下の違いを整理します。

  • A社(販売のみを希望): OEM側等が製造販売元となり、自社は発売元となります。本事例では、A社がブランド名・販売価格・商品企画を主導し、OEM側等が製造販売業者として品質・安全管理を担う契約を想定しますが、実際の事業上の決定権や役割分担は契約内容によります。ただし、OEM側が製造販売業者となる場合でも、A社の表示や関与の態様によっては、製造物責任法(PL法)上の「表示製造業者」として製造物責任を負う場合がある点に留意が必要です。
  • B社(自社で統括): 許可を取得することで、自社で品質・安全管理を統括する体制を持てる利点があります。ただし、許可取得によって処方の利用・開示やOEM先への切り替えが自由になるわけではなく、それらは契約内容や権利関係によります。委託先を変更する際も、変更先で適正に製造できるかを確認するとともに、変更内容に応じて、製造販売届出事項の変更届や表示の見直し等の要否を確認する必要があります。

当事務所では、事業者の皆様の体制やご希望に合わせた薬事法務の手続きをサポートしております。化粧品ビジネス参入についてお悩みの際は、ぜひ一度、ファーマ行政書士事務所にご相談ください。 次回は、「海外製コスメ・サプリメントの輸入販売における実務」について解説いたします。お楽しみに。

📌 ファーマ行政書士事務所では、薬学出身の行政書士が、前職の製薬企業での創薬研究や研究支援・管理業務の経験を活かし、薬事法務コンサルティングを中心とした専門性の高いサポートを提供しております。薬機法に関するご相談や、医薬品・化粧品ビジネスの許認可、事業承継など、お困りごとがございましたら、お気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

粂 昌治
粂 昌治
1987年塩野義製薬株式会社に入社。2011年まで中央研究所にて、感染症領域および癌・疼痛領域の創薬研究に従事。その間、1992年には、新規β-ラクタム系抗菌薬の創製で博士(薬学)を取得。
1998年から1年間、米国スクリプス研究所に留学。帰国後、分子標的抗がん薬の探索プロジェクトやオピオイド副作用緩和薬の探索プロジェクトを牽引し、開発候補品を創製。2011年10月、シオノギテクノアドバンスリサーチ株式会社に異動となり、新規に創設された化学支援部門を担当し、軌道に乗せる。2013年には塩野義製薬株式会社医薬研究本部に戻り、外部委託管理、契約相談、化学物質管理などの研究支援業務を担当。2020年から3年間、創薬化学研究所のラボマネージャーとして、前記研究支援業務を含む各種ラボマネジメントを担当。2023年3月に定年退職。
2023年4月に、薬事・化学物質管理コンサルティングを行う行政書士として、ファーマ行政書士事務所を開業し、現在に至る。