ファーマ行政書士事務所ブログ(薬事48)

新シリーズ「ケーススタディで学ぶ薬事許認可のリアル」、第4回のテーマは「ヘルスケア・美容機器ビジネスにおける一般製品(雑品)と『医療機器』の境界線」についてです。なお、薬機法上の医療機器等に該当しない一般製品を、本稿では便宜上「雑品」と呼びます。
健康志向の高まりやテクノロジーの進化により、スマートフォンと連動するウェアラブルデバイスや、家庭用の高性能な美容機器などが次々と市場に登場しています。これらを開発・輸入販売しようとする際、事業者の皆様が必ず直面するのが、「この製品は薬機法上の『医療機器』に該当するのか?」という問題です。
一般製品として事業化する際の法的リスク
医療機器に該当する製品を事業化する場合には、取り扱う製品と事業形態に応じて、製造販売業許可、製造業登録、品目ごとの製造販売届出・認証・承認、販売業の許可・届出等を検討する必要があります。
なお、自ら市場に出荷する「製造販売」と、小売・卸売として行う「販売」は別概念であり、既存の製造販売業者から仕入れて販売する場合は、製品区分に応じた販売業の許可・届出の問題になります。
そのため、事業化を検討する際に、医療機器としての手続が必要なのか、それとも一般製品として事業化できるのかが問題になるケースも見られます。しかし、薬機法上の医療機器に該当しなくても、電気用品安全法、電波法、消費生活用製品安全法、景品表示法などが適用される可能性があります。例えば対象電気用品の製造・輸入には届出、技術基準適合、PSE表示等が必要です。
医療機器に該当するかどうかの「総合判断」
医療機器は法律上、「疾病の診断、治療、予防に使用されること」または「身体の構造や機能に影響を及ぼすこと」を目的とする機械器具等のうち、「政令で定めるもの」と定義されています。
医療機器該当性は、製品の名称だけで決まるものではありません。使用目的、構造・作用機序、仕様、出力、使用方法、対象者、表示・説明資料・広告内容、人体へのリスクなどを総合して判断されます。広告や標榜は、その製品がどのような目的で提供されているかを示す重要な判断材料ですが、特定の文言だけで機械的に結論が決まるとは限りません。
なお、承認又は認証を要する医療機器については、これらを受ける前の広告が薬機法第68条により禁止されているため、慎重な対応が必要です。
【事例研究】よくある境界線の落とし穴
具体的にどのような表現や機能が問題になるのか、事例を見てみましょう。
事例A:美容機器(美顔器など)
- 【一般製品として比較的説明しやすい例】 「肌表面の汚れを落とす」などの表現は、実際の機能に合致していれば比較的説明しやすい例です。「リフトアップ」という表現についても一律に判断することはできません。外観上の一時的な変化を示す場合と、真皮、細胞又は筋肉への作用を示す場合とでは意味が異なりますが、前者であっても、実際の機能及び合理的根拠に合致し、広告全体から恒常的な効果等を受ける表現になっていないかを確認する必要があります。
- 【医療機器該当性が高まる例】 「細胞を活性化する」「真皮や筋肉の構造を変化させる」といった表現は医療機器的な目的性を強く示します。なお、「化粧水の角質層への浸透をサポートする」という表現も、電流や超音波などの作用機序や皮膚バリアへの働きかけ方によっては判断が変わるため注意が必要です。
事例B:マッサージ器具・リラクゼーション機器
- 【医療機器該当性が高まる例】 「疲労回復」「筋肉の疲れをとる」「筋肉のこりをほぐす」「血行を促進する」などは、医療機器的な使用目的又は効果と判断され得る表現です。一般製品では、製品の事実上の機能や使用感を超えて、これらの効果を標榜しないよう注意が必要です。
事例C:スマートウォッチ(プログラム関連)
- 【一般製品として比較的説明しやすい例】 日常の健康管理のため、心拍数等を単に表示・転送・保管するプログラムは、医療機器に該当しない例として示されています。
- 【医療機器該当性が高まる例】 同じデータでも、疾病の兆候検出(例:心房細動の兆候を検出する機能など)、診断支援、受診勧奨等を目的とすれば判断が変わります。ただし、プログラムは医療機器としての目的性に加え、機能不全時の健康リスクも考慮され、一般医療機器相当の低リスクプログラムは医療機器の範囲から除外されています。
製品のメカニズムを読み解く「サイエンスの視点」
機能や広告表現の判断においては、「そもそもこの機械が人体に対してどのような科学的・物理的影響を与えるのか?」を正しく評価できなければなりません。製品の仕様や人体への作用機序を客観的に評価する「サイエンスの視点」が、ビジネスの安全性を担保する上で重要な役割を果たします。
まとめ
製品の医療機器該当性を適切に判断した上で、医療機器として必要な手続を整えて事業化するのか、企画・設計段階で一般製品として成立する仕様・使用目的・表示内容に見直すのか、事業開始前の慎重な法務・科学的レビューが不可欠です。
さて、全4回にわたってお送りした「ケーススタディで学ぶ薬事許認可のリアル」シリーズ、いかがでしたでしょうか。
次回からは、今回の「広告標榜」の話から一歩踏み込み、新シリーズ「ヘルスケアビジネスと広告規制(薬機法・景表法)」をスタートいたします。第1回は「化粧品広告の『言えること・言えないこと』〜56の効能効果の壁〜」を予定しております。次回もぜひご期待ください。
📌 ファーマ行政書士事務所では、薬学出身の行政書士が、前職の製薬企業での創薬研究や研究支援・管理業務の経験を活かし、薬事法務コンサルティングを中心とした専門性の高いサポートを提供しております。薬機法に関するご相談や、医薬品・化粧品ビジネスの許認可、事業承継など、お困りごとがございましたら、お気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール

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1987年塩野義製薬株式会社に入社。2011年まで中央研究所にて、感染症領域および癌・疼痛領域の創薬研究に従事。その間、1992年には、新規β-ラクタム系抗菌薬の創製で博士(薬学)を取得。
1998年から1年間、米国スクリプス研究所に留学。帰国後、分子標的抗がん薬の探索プロジェクトやオピオイド副作用緩和薬の探索プロジェクトを牽引し、開発候補品を創製。2011年10月、シオノギテクノアドバンスリサーチ株式会社に異動となり、新規に創設された化学支援部門を担当し、軌道に乗せる。2013年には塩野義製薬株式会社医薬研究本部に戻り、外部委託管理、契約相談、化学物質管理などの研究支援業務を担当。2020年から3年間、創薬化学研究所のラボマネージャーとして、前記研究支援業務を含む各種ラボマネジメントを担当。2023年3月に定年退職。
2023年4月に、薬事・化学物質管理コンサルティングを行う行政書士として、ファーマ行政書士事務所を開業し、現在に至る。
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