ファーマ行政書士事務所ブログ(薬事46)

新シリーズ「ケーススタディで学ぶ薬事許認可のリアル」、第2回のテーマは「海外製コスメやサプリメントの輸入販売における実務」です。
インターネット通販の普及等により、海外製品を日本で販売するビジネスに関心が集まっています。しかし、「海外で売られているから安全だろう」「パッケージを日本語に変えれば売れるだろう」といった考えで輸入ビジネスを始めると、想定外のトラブルに直面することがあります。
今回は、化粧品とサプリメントの法規制の違いを明確にするため、以下の2つの仮想事例を設定し、それぞれの実務的なハードルと「サイエンスの視点」について解説します。
- C社: 海外化粧品を輸入し、自社を製造販売元(製造販売業者)として販売したい企業
- D社: 海外サプリメントを食品として輸入・販売したい企業
C社の事例:海外化粧品の輸入販売と成分チェック
海外化粧品を日本国内で流通させるには、国内で製品の品質・安全管理を担う化粧品製造販売業の許可が必要です。C社のように自社が製造販売業者となって輸入する場合は、自社で化粧品製造販売業許可を取得します。一方、許可を持つ事業者に輸入・製造販売を委託し、自社は発売元として販売する方法もあります。
1. 輸入化粧品に必要な手続きと体制
一般に、海外化粧品の輸入には以下の手続き・体制を整理する必要があります。これらをすべてブランド事業者自身が取得・実施するとは限らず、許可を持つ製造販売業者や製造業者への委託も可能です。
- 化粧品製造販売業許可
- 承認を要しない輸入化粧品に関する化粧品外国製造販売業者・外国製造業者届
- 品目ごとの化粧品製造販売届
- 国内の包装・表示・市場出荷前保管を行う製造所の化粧品製造業許可
2. 重要な確認事項の一つ「成分チェック」の実務
化粧品の輸入において、成分や表示の確認には専門的な判断を要します。
- INCI名等と日本の成分表示名称との対応確認: 海外製品では成分がINCI名(化粧品成分の国際的表示名称)等で示されていることがありますが、日本国内で販売する化粧品の直接の容器又は直接の被包等に行う全成分表示は、邦文名で記載します。日本化粧品工業会が公表する成分表示名称リスト等を利用し、各成分の定義、基原、化学組成等を確認して対応する名称を特定します。
- Ingredients List(全成分表示)と処方の違い: 全成分表示では、所定の要件を満たすキャリーオーバー成分を表示しないことが認められています。そのため、製品ラベルのIngredients Listだけでは、原料由来成分や化粧品基準への適合性を十分に確認できないことがあります。実務では、配合成分と配合量を示す処方情報、原料規格書、製造方法や試験成績書などを確認する必要があります。
- 医薬品成分等への該当性: 海外で化粧品として販売されている製品でも、日本の化粧品基準で原則配合が禁止される医薬品の有効成分等を含む場合や、日本では化粧品の効能・作用の範囲を超える製品と判断される場合があります。成分だけでなく、配合目的、配合量、作用、使用方法、表示・広告を含めて総合的な判断が求められます。
原料由来の微量成分を含め、化粧品基準への不適合や安全性上の問題が判明した場合には、市場出荷の停止や、出荷後の製品回収が必要になることがあります。
D社の事例:海外サプリメント(食品)の輸入販売規制
日本法には「サプリメント」という独立した区分はありません。医薬品又は医薬部外品に該当しない経口摂取製品は、原則として食品として取り扱われ、食品衛生法、食品表示法などの規制を受けます。
1. 「食薬区分」の壁
サプリメントを食品として輸入・販売するためには、まず医薬品に該当しないこと(食薬区分)を確認する必要があります。主に以下の要素を総合的に検討します。
- 成分本質・原材料: 最新の「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」への収載状況を確認します。ただし、このリストは例示であり、未収載であることだけで食品として使用できるとは限りません。植物等では、学名、使用部位、抽出方法、薬理作用・生理作用、毒性、食経験等を確認し、必要に応じて行政機関に照会します。
- 標榜する効能効果: 「糖尿病を治す」「高血圧を改善する」「疲労を回復する」など、医薬品的な効能効果をうたっていないかを確認します。
- 形状・用法・用量: アンプル形状など専ら医薬品的な形状である場合や、「食前・食後に服用」など医薬品的な用法・用量を示す場合は、医薬品と判断される要素となります。
2. 食品としての主要規制
食薬区分に問題がない場合でも、食品として輸入販売するためには以下の規制に対応する必要があります。
- 食品衛生法上の食品等輸入届出: 販売・営業使用目的で食品を輸入する場合、原則として輸入の都度、検疫所への届出が必要です。
- 原材料・添加物・規格基準の確認: 海外で認められた添加物でも、日本で未指定なら輸入・使用・販売できない場合があり、使用基準や成分規格への適合も必要です。
- 食品表示法に基づく表示: 名称、原材料名、添加物、内容量、消費期限又は賞味期限、保存方法、原産国名、輸入者、栄養成分表示、アレルゲン等について、日本の食品表示基準に適合する表示を行う必要があります。販売者が表示責任者となる場合もありますが、その場合の輸入者情報の表示方法を含め、実際の役割分担に応じた確認が必要です。
- 保健機能を表示する場合の制度確認: 特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品以外の一般食品では、食品の機能を自由に表示できるわけではありません。
サイエンスの視点と組織的判断
海外メーカーの資料をもとに法規制への適合性を判断するには、条文の知識だけでなく、成分の化学的特性や安全性を理解する「サイエンスの視点」が不可欠です。必要な情報と専門知識を確保し、組織として適合性・安全性を判断する体制が重要となります。
まとめ
海外製コスメやサプリメントの輸入ビジネスを適法に展開するためには、製品の法体系に応じた正確な手続きが求められます。
- 海外化粧品の輸入: 国内の製造販売業者と製造業者による許可・届出体制が必要であり、成分や表示の厳格な確認が求められます。
- サプリメント(食品)の輸入: 食薬区分の確認に加え、食品衛生法上の輸入届出、添加物・規格基準、食品表示法への対応が必要です。
次回の第3回は、製造販売業者における主要な責任者である「総括製造販売責任者・品質保証責任者・安全管理責任者(いわゆる三役)の実務と兼務のリアル」について解説いたします。次回もぜひご期待ください。
📌 ファーマ行政書士事務所では、薬学出身の行政書士が、前職の製薬企業での創薬研究や研究支援・管理業務の経験を活かし、薬事法務コンサルティングを中心とした専門性の高いサポートを提供しております。薬機法に関するご相談や、医薬品・化粧品ビジネスの許認可、事業承継など、お困りごとがございましたら、お気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール

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1987年塩野義製薬株式会社に入社。2011年まで中央研究所にて、感染症領域および癌・疼痛領域の創薬研究に従事。その間、1992年には、新規β-ラクタム系抗菌薬の創製で博士(薬学)を取得。
1998年から1年間、米国スクリプス研究所に留学。帰国後、分子標的抗がん薬の探索プロジェクトやオピオイド副作用緩和薬の探索プロジェクトを牽引し、開発候補品を創製。2011年10月、シオノギテクノアドバンスリサーチ株式会社に異動となり、新規に創設された化学支援部門を担当し、軌道に乗せる。2013年には塩野義製薬株式会社医薬研究本部に戻り、外部委託管理、契約相談、化学物質管理などの研究支援業務を担当。2020年から3年間、創薬化学研究所のラボマネージャーとして、前記研究支援業務を含む各種ラボマネジメントを担当。2023年3月に定年退職。
2023年4月に、薬事・化学物質管理コンサルティングを行う行政書士として、ファーマ行政書士事務所を開業し、現在に至る。
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