ファーマ行政書士事務所ブログ(薬事42)

「薬事法の変遷シリーズ」の第16回では、2019年(令和元年)薬機法改正の「前編」として、先駆的医薬品等指定制度やPACMPの法制化、IDATENを始めとする革新的医薬品・医療機器の早期実用化に向けた承認制度の進化について解説しました。
続く第17回となる今回は、「令和元年改正(中編)」として、法改正の第2の柱である「薬局・薬剤師のあり方の見直し」について紐解いていきます。
前編のメーカー(製造販売業者等)側のモノづくり規制から視点を大きく変え、患者さんに最も近い医療提供の最前線において、薬の専門家である薬剤師に求められる役割が法律上どのようにシフトしたのかに迫ります。
1. 法改正の背景にある社会構造の変化
これまで日本の薬局・薬剤師は、処方箋に基づいて正確に薬を調剤し、患者さんに渡す『対物業務(モノ中心の業務)』において重要な役割を果たしてきました。
しかし、社会の高齢化が急速に進む中、複数の医療機関から多種類の薬を処方されることによる「ポリファーマシー(多剤服用)」の問題や、在宅医療への対応ニーズが着実に高まっていきました。患者さんが安全に薬物治療を続けるためには、単にカウンターで薬を渡して終わりではなく、患者さんの生活に寄り添い、継続的に服薬状況を管理する仕組みが必要不可欠となっていたのです。
2. 「対物から対人へ」:継続的服薬指導の義務化
こうした社会的な要請を受け、令和元年改正では、薬剤師の業務の軸足を「対物から対人へ」とシフトさせる方針のもと、大幅な法改正が行われました(2020年9月1日施行)。
その最大のポイントが、薬機法および薬剤師法の改正による「服用期間を通じた継続的な薬学的管理と服薬指導の義務化」です。 これまでも薬を渡す(調剤)際の指導は義務付けられていましたが、改正法により、薬剤師は「薬を渡した後」も必要に応じて患者さんの服薬状況や副作用の有無を継続的に把握し、指導等を行うことが明確な法的義務となりました。
また、患者さんが服用している薬(他院の処方薬や市販薬を含む)の情報を一元的に把握するよう努め、必要があれば処方医へ服薬状況等フィードバック(情報提供)を行うことが努力義務化されるなど、地域医療の連携において薬剤師がより主体的な役割を果たすことが法的に位置付けられたのです。
3. 機能別の「薬局認定制度」の導入
さらに、患者さんが自身のニーズに合わせて適切な薬局を選べるよう、特定の機能を持つ薬局を都道府県知事が認定する「機能別薬局の認定制度」が新たに導入されました(2021年8月1日施行)。認定を受けた薬局以外はこれらの名称(特定の看板や呼称)を名乗ることができない「名称独占」の制度であり、以下の2つの区分があります。
- 地域連携薬局:外来受診時だけでなく、在宅医療への対応や、入退院時における医療機関等との情報共有など、地域の他の医療提供施設と密接に連携して患者さんを支える機能を持つ薬局です。地域包括ケアシステムの一翼を担うことが期待されています。
- 専門医療機関連携薬局:がん(※現在は「がん」のみが指定)などの高度な専門性を要する薬物療法において、専門的な医療機関と密接に連携し、より高度な薬学的管理を行うことができる機能を持つ薬局です。専門的な知識を持つ薬剤師の配置や、プライバシーに配慮した構造設備などが要件となります。
これらの認定制度により、薬局は単なる「薬の受け取り場所」から、それぞれの強みを活かして地域医療を支える「多機能なヘルスケア拠点」としての位置づけを明確にしました。
次なる法改正の波へ(次回予告)
令和元年改正(中編)では、医療提供体制の最前線である薬局・薬剤師の機能が現代の社会課題に合わせてどのようにアップデートされたのかを解説しました。
次回の第18回では、いよいよ全3回にわたる2019年(令和元年)薬機法改正の総仕上げとなる「後編」をお届けします。法改正の主要な柱の一つであり、企業法務・ビジネス側に多大なインパクトを与えた「法令遵守体制の厳格化(課徴金制度の創設とガバナンスの義務化、2021年8月施行)」について取り上げます。現在のコンプライアンス実務の中核であり、経営陣に直接的な責任を問う極めて重要なテーマとなりますので、どうぞご期待ください。
📌 ファーマ行政書士事務所では、薬機法に基づく許認可取得から、最新の規制動向を踏まえた事業戦略の法務サポートまで、ヘルスケアビジネスを専門的に支援しております。コンプライアンス体制の構築等でお悩みの際は、ぜひファーマ行政書士事務所へご相談ください。
投稿者プロフィール

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1987年塩野義製薬株式会社に入社。2011年まで中央研究所にて、感染症領域および癌・疼痛領域の創薬研究に従事。その間、1992年には、新規β-ラクタム系抗菌薬の創製で博士(薬学)を取得。
1998年から1年間、米国スクリプス研究所に留学。帰国後、分子標的抗がん薬の探索プロジェクトやオピオイド副作用緩和薬の探索プロジェクトを牽引し、開発候補品を創製。2011年10月、シオノギテクノアドバンスリサーチ株式会社に異動となり、新規に創設された化学支援部門を担当し、軌道に乗せる。2013年には塩野義製薬株式会社医薬研究本部に戻り、外部委託管理、契約相談、化学物質管理などの研究支援業務を担当。2020年から3年間、創薬化学研究所のラボマネージャーとして、前記研究支援業務を含む各種ラボマネジメントを担当。2023年3月に定年退職。
2023年4月に、薬事・化学物質管理コンサルティングを行う行政書士として、ファーマ行政書士事務所を開業し、現在に至る。
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