ファーマ行政書士事務所ブログ(薬事33)

「薬事法の変遷」シリーズの第7回では、難病に苦しむ患者さんのための新薬開発を国が強力に後押しする「オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)制度」が誕生した平成5年(1993年)の改正について解説しました。
続く第8回となる今回は、日本の医薬品製造のあり方を根本から変え、現在の製薬実務において避けて通ることのできない「製造管理・品質管理」の壁が法的に確立した変遷について紐解いていきます。
実は、この画期的な規制強化も、第7回で解説したオーファンドラッグ制度と同じく「平成5年の改正薬事法」によってもたらされ、その翌年に本格稼働したものです。
1. 公布と施行の交錯~GMPの「許可要件化」~
本シリーズの第5回で解説した通り、1979年(昭和54年)改正によって法的根拠を得たGMP(製造管理および品質管理の基準)は、翌1980年に「省令」として制定されました。しかし、当時はまだ遵守すべき基準(努力義務的な位置付け)にとどまっていました。
これを薬事法第13条に基づく「製造業の許可要件」として明文化したのが、平成5年(1993年)に公布された「薬事法及び医薬品副作用被害救済・研究振興基金法の一部を改正する法律(平成5年法律第27号)」です。 そして、この規定が正式に効力を持ち、GMPが完全義務化されたのが1994年(平成6年)の施行時となります。この施行と同時に、改正GMP省令である「医薬品の製造管理及び品質管理規則(平成6年厚生省令第3号)」も施行され、GMP基準を満たさなければ医薬品を製造するライセンスを得ることができないという、極めて厳格な「ハードル規制」へと進化したのです。
2. 改正の目的:「GMPの実効性の確保」
なぜ、この時期にGMPが「許可要件」へと格上げされたのでしょうか。当時の厚生省が掲げた直接の理由は「GMPの実効性を確保するため」でした。
1980年の省令化以降、日本の医薬品工場の管理水準は向上していましたが、あくまで「遵守すべき基準」であったため、万が一基準を満たしていない工場があっても、それだけを理由に直ちに許可を取り消すなどの強力な行政措置をとるのが難しいという課題がありました。 不良医薬品の発生を未然に防ぎ、国民の安全を守るためには、行政指導のレベルを超えた絶対的なルールが必要です。そこで、GMPを「許可の必須条件」に組み込むことで、現場の品質管理体制を法律の力で徹底させ、その実効性を完全に担保したのです。
次なる法改正の波へ(次回予告)
1994年(平成6年)に施行された改正法は、「GMPの実効性確保」を通じて、医薬品の製造工程における品質管理を法的義務へと押し上げたエポックメイキングな出来事でした。
そして、時を同じくして、日本の薬事行政にはもう一つの大きな波が押し寄せていました。それが、同年・平成6年(1994年)に公布された「薬事法の一部を改正する法律(平成6年法律第50号)」による、医療用具(現在の医療機器)規制の抜本的な見直しです。 それまで医薬品の規制枠組みの中で運用されがちだった医療用具が、高度化するテクノロジーや国際的な安全基準に対応するため、独自の規制体系へと歩み始めました。
次回の第9回では、現在の医療機器ビジネスにおける法的基盤の重要な出発点となった、1994年公布の医療機器(医療用具)に係る一連の改正をテーマに、その具体的な内容と歴史的意義を紐解いていきます。どうぞご期待ください。
📌 ファーマ行政書士事務所では、薬機法に基づく許認可取得から、最新の規制動向を踏まえた事業戦略の法務サポートまで、ヘルスケアビジネスを専門的に支援しております。コンプライアンス体制の構築等でお悩みの際は、ぜひファーマ行政書士事務所へご相談ください。
投稿者プロフィール

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1987年塩野義製薬株式会社に入社。2011年まで中央研究所にて、感染症領域および癌・疼痛領域の創薬研究に従事。その間、1992年には、新規β-ラクタム系抗菌薬の創製で博士(薬学)を取得。
1998年から1年間、米国スクリプス研究所に留学。帰国後、分子標的抗がん薬の探索プロジェクトやオピオイド副作用緩和薬の探索プロジェクトを牽引し、開発候補品を創製。2011年10月、シオノギテクノアドバンスリサーチ株式会社に異動となり、新規に創設された化学支援部門を担当し、軌道に乗せる。2013年には塩野義製薬株式会社医薬研究本部に戻り、外部委託管理、契約相談、化学物質管理などの研究支援業務を担当。2020年から3年間、創薬化学研究所のラボマネージャーとして、前記研究支援業務を含む各種ラボマネジメントを担当。2023年3月に定年退職。
2023年4月に、薬事・化学物質管理コンサルティングを行う行政書士として、ファーマ行政書士事務所を開業し、現在に至る。
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