ファーマ行政書士事務所ブログ(薬事7)

2025年5月21日に公布された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第37号) について解説する本シリーズ、第7弾となります。
これまでに品質・安全管理体制や安定供給体制、承認制度の大きな見直しについて触れてきましたが、今回の改正では、製造販売業者の実務に直結する「承認事項の変更管理」手続きについても重要な見直しが行われました。
医薬品、医薬部外品、化粧品の製造販売業・製造業の皆様にとって、日々の薬事業務や品質管理業務のプロセスに大きく影響する内容です。
今回のテーマは、以下の2点です。
- 一部変更承認(一変)の迅速処理制度
- 特定軽微変更の年度報告制度
⚙️ 改正の背景
医薬品等の製造販売にあたり、承認された事項(製造方法、規格、試験方法など)を変更する場合、その内容に応じて「一部変更承認申請(一変申請)」または「軽微変更届出」が必要です。
従来、一変申請は品質・有効性・安全性への影響を評価するため、一定の審査期間を要します。これにより、製品の改良や製造効率の改善を迅速に行う上でのハードルとなるケースがありました。
一方で、軽微変更届出は、品質等への影響が極めて小さい変更であっても、その都度、行政への届出が必要であり、企業側・行政側双方の事務的負担となっていました。
今回の改正は、これらの実務的な課題に対応し、変更管理の合理化と迅速化を図ることで、企業の柔軟な事業活動を支えつつ、適切な監督を維持することを目的としています。
🏛 改正のポイント①:一部変更承認(一変)の「迅速処理」制度(法第14条第15項・第16項)
まず、一部変更承認申請(一変申請)の審査の迅速化に関する改正です。
改正法 第14条第15項(新設)において、「特に適切な製造管理または品質管理を要するものとして厚生労働省令で定める医薬品、医薬部外品または化粧品」について、製造方法その他の「厚生労働省令で定める事項」の一変申請があった場合の取り扱いが新たに規定されました。
この対象となる一変申請について、厚生労働大臣は、申請を受理した日から「三月以内の厚生労働省令で定める期間内」に、承認判断を行うものとされました 。
これにより、特定の重要な変更管理について、審査の予見性が高まり、より迅速なプロセスが法的に担保されることになります。
ただし、改正法 第14条第16項(新設)により、期間内に審査を完了できない「合理的な理由」がある場合は、厚生労働大臣は期間を延長できるとされています。その際は、申請者に対し、延長後の期間や理由が通知されます。
どの範囲の医薬品等や変更内容がこの「迅速処理」の対象となるかは、今後の厚生労働省令で具体的に定められることになります。
🏛 改正のポイント②:「特定軽微変更」の「年度報告」制度(法第14条第20項・第21項)
次に、軽微な変更手続きの合理化に関する改正です。
従来、承認事項の変更のうち「厚生労働省令で定める軽微な変更」については、事後的に「軽微変更届出」を行えばよいとされていました(旧 法第14条第16項、新 法第14条第19項)。
今回の改正では、この軽微な変更のうち、さらに「品質に与える影響が小さいものとして厚生労働省令で定めるもの」が「特定軽微変更」として新たに位置づけられました。
そして、改正法 第14条第20項(新設)により、この「特定軽微変更」に該当する場合、製造販売業者は、従来の軽微変更届出(新 法第14条第19項)に代えて、「年度ごとに」まとめて厚生労働大臣に報告し、これが特定軽微変更である旨の「確認」を受けることができるようになりました。
これにより、例えば原料の規格の範囲内での軽微な変更など、品質への影響が極めて小さいと分類される変更については、変更の都度届出を行う必要がなくなり、年度末などにまとめて報告・確認を受ける、という運用が可能になります。
厚生労働大臣は、この年度報告に基づく確認を行った際は、その結果を報告者に通知することとされています(改正法 第14条第21項(新設))。
💬 実務への影響
今回の変更管理に関する改正は、製造販売業者の薬事部門、品質保証(QA)部門、製造管理部門の実務に大きな影響を与えます。
1. 変更管理プロセスの見直し
企業は、社内の変更管理規程(SOP)等を見直し、「一変承認(迅速処理対象)」、「一変承認(通常処理対象)」、「特定軽微変更(年度報告)」、「軽微変更届出(都度届出)」のいずれに該当するかを適切に分類・管理するプロセスを再構築する必要があります。
2. 厚生労働省令の注視
「迅速処理」の対象となる医薬品等・変更事項、および「特定軽微変更」の具体的な範囲は、いずれも今後の厚生労働省令で定められます。これらの下位法令の内容が、実務上の業務フローを決定する上で極めて重要となります。
3. 薬事戦略・生産計画への反映
一変承認の審査期間が「3ヶ月以内」と明確化されることで 、製造方法の改良や製造ラインの変更、原料サプライヤーの追加・変更など、これまで審査期間が読みにくかった薬事イベントの計画性が向上し、より柔軟な生産・供給戦略が立てやすくなる可能性があります。
✨ まとめ
第7弾では、2025年薬機法改正のうち、「承認事項の変更管理」に関する実務的な改正点について解説しました。
- ① 一部変更承認(一変)の「迅速処理」制度(3ヶ月以内)の新設
- ② 「特定軽微変更」の「年度報告・確認」制度の新設
これらの改正は、行政による審査の効率化と、企業における柔軟かつ迅速な変更管理業務を両立させることを目的としています。
これらの規定は、公布の日(令和7年5月21日)から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日に施行される予定です。
📌 ファーマ行政書士事務所では、薬機法改正対応や薬事に関する法令対応についてのご相談を承っています。
※本記事は、2026年5月21日に公布された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第37号)の内容及びそれによって予測される影響について記述しています。法解釈を含む内容については、個別の事案やその後の解釈等により異なる場合があります。正確な情報は必ずご自身でご確認いただくようお願いいたします。
投稿者プロフィール

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1987年塩野義製薬株式会社に入社。2011年まで中央研究所にて、感染症領域および癌・疼痛領域の創薬研究に従事。その間、1992年には、新規β-ラクタム系抗菌薬の創製で博士(薬学)を取得。
1998年から1年間、米国スクリプス研究所に留学。帰国後、分子標的抗がん薬の探索プロジェクトやオピオイド副作用緩和薬の探索プロジェクトを牽引し、開発候補品を創製。2011年10月、シオノギテクノアドバンスリサーチ株式会社に異動となり、新規に創設された化学支援部門を担当し、軌道に乗せる。2013年には塩野義製薬株式会社医薬研究本部に戻り、外部委託管理、契約相談、化学物質管理などの研究支援業務を担当。2020年から3年間、創薬化学研究所のラボマネージャーとして、前記研究支援業務を含む各種ラボマネジメントを担当。2023年3月に定年退職。
2023年4月に、薬事・化学物質管理コンサルティングを行う行政書士として、ファーマ行政書士事務所を開業し、現在に至る。
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