ファーマ行政書士事務所ブログ(薬事6)

2025年薬機法改正では、医薬品の品質管理や供給体制に関する改正と並び、医薬品の「承認制度」そのものの在り方に大きな見直しが行われました。
その中心が、条件付き承認制度の再構築(第14条の2の2)です※。
あわせて、条件不履行時の承認取消し制度(第74条の2)が規定され、市販後データを評価する再審査制度(第14条の4)との連携も明確化されました。
これにより、革新的医薬品をより早く患者に届けつつ、市販後に安全性・有効性を継続的に検証する、「開発から市販後まで一貫した評価体制」が法的に確立されます。
※本改正では、医薬品だけでなく、医療機器や体外診断用医薬品についても、同様の条件付き承認制度の再構築がなされましたが、本編では、医薬品のみを取り上げています。
⚙️ 改正の背景
条件付き承認制度は、もともと2017年に厚生労働省課長通知により導入されました。
その後、2020年(令和2年)薬機法改正によって、第14条第5項、第12項、第13項などにより正式に法定化されました。
この改正により、医療上特に必要性の高い医薬品で、患者数が少ない等の理由で有効性・安全性を検証するための臨床試験の実施が困難である場合には、一定の条件を付して承認することが可能となりました。
しかし、制度の運用を通じて、
- 国際標準と比べた適用要件の厳格さ
- 承認取消し規定の欠如
- 制度の活用実績の低迷
といった課題が指摘されてきました。
これらの課題に対応するため、2025年改正では法体系を整理・再構築、条件付き承認制度を第14条の2の2として独立条文化し、承認・取消し・再審査との関係を体系的に明確化しました。
🏛 改正のポイント
① 条件付き承認の要件と手続を明確化(第14条の2の2)
改正法では、条件付き承認制度を新たに第14条の2の2として独立。対象・要件・手続の基本構造が明示されました。
厚生労働省令で定める基準に基づき、
- 医療上特に必要性の高い医薬品であること
- 効能または効果が合理的に予測できること
- 有害作用のために医薬品としての使用価値がないと合理的に予測できるものでないこと
などを総合的に判断し、厚生労働大臣が一定の条件を付して承認できる仕組みです。 ここでいう「条件」とは、追加の臨床試験・市販後調査・使用制限などを指すと考えられます。
② 承認取消し制度の拡充(第74条の2)
第74条の2に列挙された承認取消し要件に、条件付き承認を取消す場合の要件が追加されました。即ち、条件付き承認を受けた医薬品について、
- 承認時の条件を満たさなくなった場合
- 有効性または安全性を合理的に予測できなくなった場合
には、厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて、承認を取り消さなければならない旨が規定されました。
これにより、承認後のフォローアップ体制が明確化され、承認から取消しまでを一貫して管理できる制度構造となりました。
③ 市販後評価と再審査制度との連携強化(第14条の4)
条件付き承認を受けた医薬品を含むすべての承認品目について、再審査申請時に提出すべき資料の範囲が明確化されました(第14条の4第5項)。
「再審査申請をする者は、厚生労働省令で定めるところにより、品質、有効性および安全性に関する資料を添付しなければならない。」
この改正により、再審査で評価すべきデータ(品質・有効性・安全性)が法定化され、条件付き承認下で収集された市販後データが、再審査時に適切に評価される制度的枠組みが整いました。
💬 実務への影響
- 開発戦略の「早期化」と「柔軟化」
- 「探索的試験(第II相など)」の重要性が向上
- 開発タイムラインが短縮
- 国際共同治験における日本の位置づけの変化
- PMDA(規制当局)との協議の「高頻度化」と「前倒し」
- コンサルテーションの重要性が向上
- 逐次的相談の活用
- 市販後検証計画の精緻化
- 市販後対応の「厳格化」と「リスク管理」
- 「承認取消し」という明確なリスク
- 市販後検証(PMS)の絶対的な責務
- リソース配分の変化
✨ まとめ
今回の改正は、薬機法を「事前審査中心の法」から「継続的評価型の法」へと進化させるものです。
従来:データが十分に揃うまで承認できない。
改正後:リスクを管理しつつ条件付きで早期承認し、市販後にエビデンスを積み上げて検証する。
これにより、患者には革新的治療薬への早期アクセスが、企業には柔軟かつ戦略的な開発・承認の選択肢が広がります。
薬機法は今、
「安全を守る法」から「革新を支える法」へ。
🗓️ 施行時期
条件付き承認制度に関する改正は、公布後1年以内の施行とされていましたが、2025年7月25日に公布された施行期日を定める政令により、2026年5月1日の施行と決まりました。
📌 ファーマ行政書士事務所では、薬機法改正対応や薬事に関する法令対応についてのご相談を承っています。
※本記事は、2025年5月21日に公布された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第37号)の内容及びそれによって予測される影響について記述しています。法解釈を含む内容については、個別の事案やその後の解釈等により異なる場合があります。正確な情報は必ずご自身でご確認いただくようお願いいたします。
投稿者プロフィール

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1987年塩野義製薬株式会社に入社。2011年まで中央研究所にて、感染症領域および癌・疼痛領域の創薬研究に従事。その間、1992年には、新規β-ラクタム系抗菌薬の創製で博士(薬学)を取得。
1998年から1年間、米国スクリプス研究所に留学。帰国後、分子標的抗がん薬の探索プロジェクトやオピオイド副作用緩和薬の探索プロジェクトを牽引し、開発候補品を創製。2011年10月、シオノギテクノアドバンスリサーチ株式会社に異動となり、新規に創設された化学支援部門を担当し、軌道に乗せる。2013年には塩野義製薬株式会社医薬研究本部に戻り、外部委託管理、契約相談、化学物質管理などの研究支援業務を担当。2020年から3年間、創薬化学研究所のラボマネージャーとして、前記研究支援業務を含む各種ラボマネジメントを担当。2023年3月に定年退職。
2023年4月に、薬事・化学物質管理コンサルティングを行う行政書士として、ファーマ行政書士事務所を開業し、現在に至る。
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