ファーマ行政書士事務所ブログ(薬事5)

2025年薬機法改正の第1段階として、「特定医薬品」に関する新制度の一部が2025年11月20日に施行されます。
ここ数年、製薬企業の出荷停止や供給不足が相次ぎ、抗菌薬・解熱鎮痛薬など、日常診療に不可欠な医薬品が入手困難となる事態が続きました。この社会的課題に対応するため、薬機法は初めて「医薬品供給リスク管理」を法制度として位置づけました。
🏛 改正の概要
今回施行されるのは、次の5つの改正です。
| 区分 | 改正条文 | 内容 |
| ① | 第2条第17項(新設) | 「特定医薬品」の定義 |
| ② | 第18条の3(新設) | 出荷停止のおそれがある場合の報告義務 |
| ③ | 第18条の4(新設) | 出荷停止・制限を行った場合の届出義務 |
| ④ | 第18条の5(新設) | 厚労大臣による報告徴収制度 |
| ⑤ | 第69条(改正) | 立入検査の理由に「特定医薬品」を追加 |
🔹① 「特定医薬品」の定義(第2条第17項)
改正薬機法第2条第17項では、「特定医薬品」が次のように定義されました。
「この法律において『特定医薬品』とは、要指導医薬品、一般用医薬品、薬局製造販売医薬品(体外診断用医薬品を除く)および厚生労働省令で定める医薬品を除いた医薬品をいう。」
つまり、「特定医薬品」とは、要指導医薬品や一般用医薬品などを除いた、医療用医薬品の大部分が対象となると考えられます。
この定義は、「供給不足が生じた場合に国民生活に重大な影響を及ぼす可能性がある医薬品群を行政的に把握・管理する」ことを目的としており、具体的な該当範囲は、厚生労働省令により今後指定されます。
➡️ ポイント:定義上は“除外規定型”であり、直接的に“社会的影響の大きい医薬品”を定義しているわけではありません。
🔹② 出荷停止「のおそれ」がある場合の報告義務(第18条の3)
特定医薬品の製造販売業者は、その製造販売をする特定医薬品について、6ヵ月以内に出荷停止または出荷制限することにしたとき、または、そのおそれが生じたときは、直ちに厚生労働大臣に報告しなければなりません。これにより、行政は早期段階から供給リスクを把握し、代替薬の確保や製造支援などの対策を講じることが可能となります。
➡️ ポイント:「速やかに」ではなく、「直ちに」報告と規定されています。
🔹③ 出荷停止・制限を行った場合の届出義務(第18条の4)
実際に出荷停止または出荷制限を行った場合は、直ちに厚生労働大臣に届け出ることが必要となります。厚生労働大臣は、届出を受けた場合には、その情報を公表するものとされており、医療現場や流通関係者への情報共有が制度的に保障されます。
➡️ ポイント:「速やかに」ではなく、「直ちに」届出と規定されています。
🔹④ 報告徴収制度(第18条の5)
厚生労働大臣は、②の報告や③の届出があった特定医薬品に関して、その代替となる医薬品の製造販売業者や販売業者等、関連事業者に対し、製造、輸入、販売等の状況など、必要な事項について報告を求めることができるようになります。
これにより、行政側が能動的に、必要とされる医薬品の供給状況をモニタリングできる体制が構築されます。
🔹⑤ 立入検査の理由追加(第69条関係)
第69条が改正され、厚生労働大臣は、②の報告や③の届出の遵守状況を確かめるために必要があれば、製造販売業者に立入検査を行うことができるようになりました。
⚖️ 今回の改正の意義
この改正は、医薬品供給問題に対し、行政が法的根拠を持って情報収集と対応を行うための基盤を整備するものです。
- 「おそれ」の段階での報告義務化
- 出荷停止時の届出義務
- 行政による報告徴収と立入検査
これらが組み合わさることで、法令に基づく供給情報管理制度が確立され、行政がリアルタイムで情報を把握し、代替薬確保や出荷調整などを事前に講じることが可能になります。
💬 企業が今すぐ準備すべきこと
- 自社品目の中で「特定医薬品」に該当する可能性のある製品を整理
- 出荷停止の「おそれ」を検知した場合の社内報告ルート・判断基準を設定
- 厚労省への報告・届出手順書を整備
- 関連部門(品質保証・供給管理・薬事)間の連携体制を明確化
📌 ファーマ行政書士事務所では、薬機法改正対応や薬事に関する法令対応についてのご相談を承っています。
※本記事は、2025年5月21日に公布された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第37号)の内容及びそれによって予測される影響について記述しています。法解釈を含む内容については、個別の事案やその後の解釈等により異なる場合があります。正確な情報は必ずご自身でご確認いただくようお願いいたします。
投稿者プロフィール

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1987年塩野義製薬株式会社に入社。2011年まで中央研究所にて、感染症領域および癌・疼痛領域の創薬研究に従事。その間、1992年には、新規β-ラクタム系抗菌薬の創製で博士(薬学)を取得。
1998年から1年間、米国スクリプス研究所に留学。帰国後、分子標的抗がん薬の探索プロジェクトやオピオイド副作用緩和薬の探索プロジェクトを牽引し、開発候補品を創製。2011年10月、シオノギテクノアドバンスリサーチ株式会社に異動となり、新規に創設された化学支援部門を担当し、軌道に乗せる。2013年には塩野義製薬株式会社医薬研究本部に戻り、外部委託管理、契約相談、化学物質管理などの研究支援業務を担当。2020年から3年間、創薬化学研究所のラボマネージャーとして、前記研究支援業務を含む各種ラボマネジメントを担当。2023年3月に定年退職。
2023年4月に、薬事・化学物質管理コンサルティングを行う行政書士として、ファーマ行政書士事務所を開業し、現在に至る。
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