ファーマ行政書士事務所ブログ(薬事18)

2025年5月21日に公布された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第37号)(以下、改正法)。 これまで本ブログでは、改正法に基づき実務に大きな影響を与えるポイントを解説してきましたが、第18弾となる今回は、昨今社会問題化している医薬品のオーバードーズ(過剰摂取)対策の要となる「指定濫用防止医薬品」について取り上げます。

若年者を中心とした市販薬の濫用を防ぐため、今回の改正では、これまでの省令・通知レベルの規制から、法律(薬機法)による直接的な規制へと格上げされ、販売ルールが大幅に厳格化されます。施行日(令和8年5月1日)に向けて、薬局・店舗販売業の皆様が準備すべきポイントを整理しました。

💊 「指定濫用防止医薬品」とは?(第36条の11新設)

これまで「濫用等のおそれのある医薬品」として管理されていたものが、改正法により「指定濫用防止医薬品」として法律上に明確に位置づけられました。 具体的には、濫用した場合に中枢神経系の興奮・抑制や幻覚を生じるおそれがある医薬品として、厚生労働大臣が指定するものが対象となります。(コデイン、ジヒドロコデイン、メチルエフェドリン、ブロモバレリル尿素などが指定され、さらにデキストロメトルファンなどの追加も検討されています。)

🔄 販売ルールの厳格化:3つの大きな変更点

今回の改正の最大のポイントは、販売時における「対面等」による確認と情報提供の義務化です。

1. 若年者・多量購入者への「対面・映像通話」の必須化

これまではインターネット販売等において、チャットや電話のみでの対応も見られましたが、今後は以下のケースにおいて、「対面」または「映像及び音声の送受信により相手の状態を相互に認識できる方法(ビデオ通話等)」での情報提供が必須となります。

  • 購入者が若年者(18歳未満)の場合
  • 多量・頻回購入の場合(適正使用に必要な数量を超える場合)

※18歳未満への販売は、適正使用数量内であっても、原則として対面またはビデオ通話による情報提供が必要です。また、チャットのみや、音声のみの電話は認められません。

2. 購入者への確認事項の法的義務化

販売時には、薬剤師または登録販売者が以下の事項を確認することが義務付けられました。

  • 年齢(外見で明らかでない場合は身分証等で確認)
  • 他の薬局等での購入状況
  • 使用者の状況(購入者と使用者が異なる場合)
  • 多量購入の理由(「家庭の常備薬」「海外旅行用」など、理由を確認し、薬剤師等が妥当性を判断します)

3. 陳列方法とパッケージ表示の変更(7メートルルール)

店舗における物理的な管理方法も強化されます。

  • 陳列場所の制限: 情報提供を行う設備(カウンター等)から7メートル以内に陳列し、かつ、薬剤師等が継続的に配置されている必要があります。
  • 接触防止: 購入者が直接手に触れられない陳列設備(鍵付き棚やカウンター内など)への陳列、またはいわゆる「空箱陳列」等の措置が求められます。
  • 「要確認」表示: 対象医薬品のパッケージ(直接の容器・被包)に、「要確認」という文字の記載が義務付けられます。(黒枠に黒字等、視認性の高い表示が必要です。)

✨ 実務への影響と準備

この改正に伴い、薬局・店舗販売業者は「指定濫用防止医薬品販売等手順書」の作成が必須となります。 手順書には、販売時の確認フロー、頻回購入者への対応、陳列方法などを具体的に定める必要があります。また、特定販売(ネット販売)を行う場合も、年齢確認システム(身分証アップロードや公的個人認証など)の導入や、ビデオ通話システムの整備が必要となるでしょう。

施行は令和8年(2026年)5月1日です。 これまでの運用フローを大幅に見直す必要があるため、早めの準備をおすすめします。

📌 ファーマ行政書士事務所では、手順書の作成支援や、改正法に対応した薬事コンサルティングを行っております。ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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※本記事は、2026年5月21日に公布された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第37号)の内容及びそれによって予測される影響について記述しています。法解釈を含む内容については、個別の事案やその後の解釈等により異なる場合があります。正確な情報は必ずご自身でご確認いただくようお願いいたします。

投稿者プロフィール

粂 昌治
粂 昌治
1987年塩野義製薬株式会社に入社。2011年まで中央研究所にて、感染症領域および癌・疼痛領域の創薬研究に従事。その間、1992年には、新規β-ラクタム系抗菌薬の創製で博士(薬学)を取得。
1998年から1年間、米国スクリプス研究所に留学。帰国後、分子標的抗がん薬の探索プロジェクトやオピオイド副作用緩和薬の探索プロジェクトを牽引し、開発候補品を創製。2011年10月、シオノギテクノアドバンスリサーチ株式会社に異動となり、新規に創設された化学支援部門を担当し、軌道に乗せる。2013年には塩野義製薬株式会社医薬研究本部に戻り、外部委託管理、契約相談、化学物質管理などの研究支援業務を担当。2020年から3年間、創薬化学研究所のラボマネージャーとして、前記研究支援業務を含む各種ラボマネジメントを担当。2023年3月に定年退職。
2023年4月に、薬事・化学物質管理コンサルティングを行う行政書士として、ファーマ行政書士事務所を開業し、現在に至る。