ファーマ行政書士事務所ブログ(薬事16)

これまで、2025年5月21日に公布された薬機法改正法について解説するシリーズをお届けしてきましたが、今回の第16弾は、薬事分野における行政書士法改正というテーマをお届けします。
(薬機法改正シリーズは、まだまだ続きます。)

改正行政書士法(2025年6月13日公布)が、2026年1月1日より施行されました。今回の改正で最も注目すべき点は、行政書士または行政書士法人でない者が、他人の依頼を受けて報酬を得て官公署に提出する書類を作成することについて、「いかなる名目によるかを問わず」という文言が追加され(行政書士法第19条)、その違法性がより明確化されたことです。

これまで、コンサルティング契約や業務委託契約といった名称を用いることで、実質的な行政書士業務(書類作成代行)を行う脱法的な行為が問題視されてきました。

薬機法(旧薬事法)に基づく許認可申請は、極めて専門性が高いため、こうした「無資格者による業務」が潜在しやすい領域でもあります。今回は、薬事行政手続きにおいて、実際にどのような形で無資格業務が行われているのか、その実態と企業側が負うべきリスクについて解説します。

💊 薬事手続きにおける無資格業務の「件数」と実態

「薬事手続きにおいて、無資格者が行政書士業務を請け負っている事例はどれくらいあるのか?」

このような疑問を持たれる方も多いかと思いますが、結論から申し上げますと、公的な統計データとして具体的な件数は存在しません。

なぜなら、これらの業務は「コンサルティング」や「輸入代行サービス」といった適法な業務の中に巧妙に組み込まれており、表面上は違法行為として認識されにくいためです。しかし、今回の法改正で「名目」による言い逃れができなくなった背景には、こうした潜脱行為が許認可の現場で常態化しており、看過できない規模にあるという立法事実があります。

特に薬事分野では、以下のようなケースが潜在していると考えられます。

🔄 薬事分野に多い「隠れ無資格業務」の典型例

薬事申請の現場で見受けられる典型的な事例には、大きく分けて2つのパターンがあります。

1.輸入代行業者による書類作成のセット販売

化粧品や医療機器の輸入ビジネスにおいて、物流や通関の手配を行う業者が、「製造販売業許可の申請書類もサービスで作っておきます」と持ちかけるケースです。 この場合、書類作成費用として別途請求書が出ることは少なく、「輸入代行手数料」や「ロジスティクス契約」の中に費用が含まれている(埋没している)ことがほとんどです。これまで「書類作成の報酬は貰っていない」という理屈でまかり通っていたケースも、改正法により明確に規制対象となります。

2.薬事コンサルタントによる作成代行

 「薬事戦略のアドバイス」や「QMS(品質管理監督システム)構築支援」として契約し、実務として申請書のドラフト(下書き)作成や入力作業そのものを請け負うケースです。 「アドバイスはするが、実際の入力は申請者が行う」という建前が崩れ、コンサルタントが作成したデータをそのまま申請者が提出する運用になっている場合、実質的な作成代行とみなされるリスクが高まります。

💬 依頼する企業側のリスク

今回の法改正は、業務を行う無資格者への取り締まり強化だけでなく、依頼する側の企業(製薬会社、化粧品メーカー、医療機器販売業者など)にとっても重大な意味を持ちます。

もし、無資格者に許可申請手続きを依頼していたことが発覚した場合、以下のようなリスクが想定されます。

1.コンプライアンス上の重大な問題

違法行為に加担したとして、企業の社会的信用が失墜する恐れがあります。特に上場企業や、高い倫理観が求められるライフサイエンス企業にとっては致命的となりかねません。

2.許可そのものの有効性への影響

最悪の場合、不正な手段で許可を得たとみなされ、許可の取り消しや再申請の指導が入る可能性も否定できません。事業の継続性に直結する問題です。

✨ まとめ

2026年の行政書士法改正により、行政書士または行政書士法人でない者が、「いかなる名目によるかを問わず」報酬を得て行政書士業務を行うことは違法であると明確に示されました。

薬事分野における無資格者の関与件数は数字として表には出てきませんが、輸入ビジネスや新規参入支援の現場では、相当数が潜在していると推測されます。

「コンサルタント」や「代行業者」に依頼をする際は、その業務範囲が適法なアドバイスにとどまるのか、それとも違法な書類作成代行を含んでいるのかを、改めて確認する必要があります。

📌 ファーマ行政書士事務所では、行政書士としての法的資格に基づき、薬機法に関わる許認可申請書類の作成から提出代行までを適法かつ確実にサポートいたします。 コンプライアンスを遵守した薬事申請体制の構築をご検討の際は、どうぞお気軽にご相談ください。

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※本記事は、2026年1月1日に施行された改正行政書士法の内容及びそれに関連する薬事実務への影響について記述しています。法解釈を含む内容については、個別の事案やその後の解釈等により異なる場合があります。正確な情報は必ずご自身でご確認いただくようお願いいたします。

投稿者プロフィール

粂 昌治
粂 昌治
1987年塩野義製薬株式会社に入社。2011年まで中央研究所にて、感染症領域および癌・疼痛領域の創薬研究に従事。その間、1992年には、新規β-ラクタム系抗菌薬の創製で博士(薬学)を取得。
1998年から1年間、米国スクリプス研究所に留学。帰国後、分子標的抗がん薬の探索プロジェクトやオピオイド副作用緩和薬の探索プロジェクトを牽引し、開発候補品を創製。2011年10月、シオノギテクノアドバンスリサーチ株式会社に異動となり、新規に創設された化学支援部門を担当し、軌道に乗せる。2013年には塩野義製薬株式会社医薬研究本部に戻り、外部委託管理、契約相談、化学物質管理などの研究支援業務を担当。2020年から3年間、創薬化学研究所のラボマネージャーとして、前記研究支援業務を含む各種ラボマネジメントを担当。2023年3月に定年退職。
2023年4月に、薬事・化学物質管理コンサルティングを行う行政書士として、ファーマ行政書士事務所を開業し、現在に至る。