ファーマ行政書士事務所ブログ(薬事15)

2025年5月21日に公布された薬機法改正法について解説する本シリーズ、第15弾となります。
2025年薬機法改正の改正ポイントの中には、制度の枠組みを大きく書き換えるのではなく、評価に用いる資料をどのレベルで規定するかという点に、特徴的な工夫をしたものがあります。
とりわけ、医薬品・医療機器等・再生医療等製品の製造販売承認や、承認後の再審査等(医薬品、再生医療等製品については再審査、医療機器等については使用成績評価)に関して、申請資料の範囲を法律ではなく省令に委ねるという設計が採られている点は、注目に値します。
本記事では、この「省令委任」という手法に着目し、今回の改正が承認から承認後評価までをどのように捉え直そうとしているのかを考えてみます。
💊 申請資料を法律で固定しなかったという選択
今回の改正では、承認申請や再審査等の申請に際して提出すべき資料について、法律の条文上、具体的な内容までは規定されていません。必要な資料は、省令で定めるという整理がなされています。
これは、規制を緩めたというよりも、評価に用いる情報の在り方が今後も変化し続けることを前提にした制度設計と考えることができます。医療データや評価手法の進展を踏まえると、資料の内容を法律で固定してしまうことは、かえって制度の柔軟性を損なうおそれがあります。
🔄 省令レベルでデータ活用を広げるという発想
省令に委ねるという構造を採ったことで、評価に用いる資料の「型」を、より柔軟に設計できる余地が生まれます。
従来、承認や承認後評価では、臨床試験データが中心的な役割を果たしてきました。一方、承認後には、医療現場での使用を通じて、さまざまな情報が蓄積されます。省令レベルで資料の範囲を定めることで、こうした実使用下で得られるデータ(いわゆるリアルワールドデータ)を、評価の枠組みに組み込みやすくする道が開かれます。
重要なのは、特定のデータを使うことを法律で義務づけた点ではなく、使えるデータの選択肢を制度として広げた点にあります。
💬 承認と承認後評価を一連のプロセスとして捉える
今回の改正では、同じ「省令委任」の考え方が、製造販売承認の段階と、再審査等といった承認後評価の段階の双方に用いられています。
このことは、承認と承認後評価を切り離された別々の制度としてではなく、一連の評価プロセスとして捉え直そうとする発想を示しているように思われます。承認時にどのようなデータを用い、承認後にどのような情報を追加的に評価していくのか。その全体像を、将来の変化にも対応できる形で設計しようとする意図が読み取れます。
✨ おわりに
今回の改正ポイントは、評価制度を抜本的に変えるものではありません。しかし、「省令委任」という手法を通じて、データ活用の可能性を広げる基盤を整えた改正と位置づけることができます。
承認から承認後評価までを貫くこの制度設計の意味をどう理解し、実務にどう反映させていくかは、今後の運用や省令の具体化と合わせて、引き続き注目すべき論点といえるでしょう。
📌 ファーマ行政書士事務所では、薬機法改正対応や薬事に関する法令対応についてのご相談を承っています。
※本記事は、2026年5月21日に公布された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第37号)の内容及びそれによって予測される影響について記述しています。法解釈を含む内容については、個別の事案やその後の解釈等により異なる場合があります。正確な情報は必ずご自身でご確認いただくようお願いいたします。
投稿者プロフィール

-
1987年塩野義製薬株式会社に入社。2011年まで中央研究所にて、感染症領域および癌・疼痛領域の創薬研究に従事。その間、1992年には、新規β-ラクタム系抗菌薬の創製で博士(薬学)を取得。
1998年から1年間、米国スクリプス研究所に留学。帰国後、分子標的抗がん薬の探索プロジェクトやオピオイド副作用緩和薬の探索プロジェクトを牽引し、開発候補品を創製。2011年10月、シオノギテクノアドバンスリサーチ株式会社に異動となり、新規に創設された化学支援部門を担当し、軌道に乗せる。2013年には塩野義製薬株式会社医薬研究本部に戻り、外部委託管理、契約相談、化学物質管理などの研究支援業務を担当。2020年から3年間、創薬化学研究所のラボマネージャーとして、前記研究支援業務を含む各種ラボマネジメントを担当。2023年3月に定年退職。
2023年4月に、薬事・化学物質管理コンサルティングを行う行政書士として、ファーマ行政書士事務所を開業し、現在に至る。
最新の投稿
ブログ2026年1月19日ファーマ行政書士事務所ブログ(薬事16)
ブログ2026年1月12日ファーマ行政書士事務所ブログ(薬事15)
ブログ2026年1月5日ファーマ行政書士事務所ブログ(薬事14)
ブログ2025年12月27日ファーマ行政書士事務所ブログ(薬事13)

