ファーマ行政書士事務所ブログ(薬事13)

2025年5月の薬機法改正法の公布以降、多くの製造業者が注目していた「医薬品製造管理者の要件緩和」。 前回のブログ(第12弾)では、「薬剤師以外の技術者を登用できる例外範囲が拡大される」という法の枠組みをお伝えしましたが、その詳細を定めた「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令(令和7年厚生労働省令第117 号。以下「整備省令」という。)」が2025年(令和7年)11月28日に公布され、同日、関連通知(医薬発1128第6号)が発出されました。
今回の通知で明らかになったのは、薬剤師に代わる技術者に求められる「学歴等の専門性」と、この措置が決して恒久的なものではなく「5年間」という明確な期間制限付きであるという厳しい現実です。 今回は、上記通知の記載に基づき、新制度の全容を解説します。
1. 施行日は「2026年(令和8年)5月1日」
まずスケジュールですが、今回公布された整備省令の施行日は、2026年(令和8年)5月1日と決定しました。 製造業者の皆様には、施行まで約4ヶ月の準備期間があります。
2. 「薬剤師以外の技術者」が認められるための3つの要件
通知(医薬発1128第6号)によると、薬剤師以外の技術者を製造管理者に選任するためには、以下の要件を満たす必要があります。
① 前提:薬剤師の確保が困難であること
まず大前提として、「薬剤師を置くことが著しく困難であると認められる場合」でなければなりません。 単なる人員配置の都合ではなく、客観的に薬剤師の確保が難しい状況にあることが求められていると考えられます(この「著しく困難」の具体的な判断基準については、今後の運用通知等でさらに詳細が示される可能性がありますが、現時点では不明です)。
② 技術者の要件:薬学・化学の専門課程修了者
では、どのような技術者であれば製造管理者になれるのでしょうか。通知では、以下のいずれかに該当する者と規定されています。
ア 大学等で薬学又は化学に関する専門の課程を修了した者
イ 厚生労働大臣がアに掲げる者と同等以上の知識経験を有すると認めた者
つまり、誰でも良いわけではなく、大学等で「薬学」や「化学」を専門的に学んだアカデミックなバックグラウンドを持つ人材であることが、明確な条件として課されました。
③ 期間の制限:「5年ルール」
そして、今回最も注意すべき点が、この例外措置の有効期間です。通知には以下のように明記されました。
「医薬品の製造管理について、薬剤師に代え、技術者をもって行わせることができる期間は、医薬品製造管理者として技術者を置いた日から起算して5年とする」
つまり、一度技術者を選任すれば恒久的にそのままで良いわけではなく、5年ごとに薬剤師への切り替えや状況の再確認が求められる「時限的な措置」であるということです。
3. その他の遵守事項(補佐薬剤師の配置など)
さらに、薬剤師以外の技術者を置く場合、製造業者には以下の遵守事項が追加されます。
- 医薬品製造管理者補佐薬剤師の配置:技術者を補佐する「薬剤師」を置くこと。
- 薬剤師確保のための措置:将来的に薬剤師を管理者として置くために必要な措置(採用活動や育成計画等)を講ずること。
「製造管理者は技術者でよいが、現場に薬剤師がいなくてよいわけではない(補佐薬剤師が必要)」という点は、実務上非常に重要なポイントになります。
4. 体外診断用医薬品の製造管理者について
体外診断用医薬品についても、医薬品と同様の規定が整備されます。
5. 企業が準備すべきこと
これらの要件を踏まえ、製造管理者に薬剤師以外の技術者を置くことを検討されている医薬品製造業者は以下の対応が必要です。
- 人材の確認: 社内に「大学等で薬学・化学を修了した」技術者がいるか確認する。
- 補佐体制の検討: 管理者を技術者にする場合、誰を「補佐薬剤師」として配置するかを検討する。
- 5年計画の策定: 技術者登用は「5年間の限定措置」であることを前提に、その後の薬剤師採用・育成計画を策定する。
✨ まとめ
今回の通知により、製造管理者の要件緩和は「無条件の緩和」ではなく、「確かな専門性を持つ技術者に、5年間限定で、薬剤師の補佐付きで管理を任せる」という、品質確保に配慮した慎重な制度であることが判明しました。
📌 ファーマ行政書士事務所では、薬機法改正対応や薬事に関する法令対応についてのご相談を承っています。
※本記事は、2026年5月21日に公布された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第37号)の内容及びそれによって予測される影響について記述しています。法解釈を含む内容については、個別の事案やその後の解釈等により異なる場合があります。正確な情報は必ずご自身でご確認いただくようお願いいたします。
投稿者プロフィール

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1987年塩野義製薬株式会社に入社。2011年まで中央研究所にて、感染症領域および癌・疼痛領域の創薬研究に従事。その間、1992年には、新規β-ラクタム系抗菌薬の創製で博士(薬学)を取得。
1998年から1年間、米国スクリプス研究所に留学。帰国後、分子標的抗がん薬の探索プロジェクトやオピオイド副作用緩和薬の探索プロジェクトを牽引し、開発候補品を創製。2011年10月、シオノギテクノアドバンスリサーチ株式会社に異動となり、新規に創設された化学支援部門を担当し、軌道に乗せる。2013年には塩野義製薬株式会社医薬研究本部に戻り、外部委託管理、契約相談、化学物質管理などの研究支援業務を担当。2020年から3年間、創薬化学研究所のラボマネージャーとして、前記研究支援業務を含む各種ラボマネジメントを担当。2023年3月に定年退職。
2023年4月に、薬事・化学物質管理コンサルティングを行う行政書士として、ファーマ行政書士事務所を開業し、現在に至る。
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