ファーマ行政書士事務所ブログ(薬事26)

いつもファーマ行政書士事務所ブログをご覧いただきありがとうございます。
これまで「令和7年薬機法改正シリーズ」「日本の薬事規制の変遷シリーズ」をお届けしてまいりましたが、今回から新たな連載として「薬事法の変遷シリーズ」をスタートいたします。現在の薬機法実務に通じる原点を深く理解するため、まずは1960年制定の薬事法が誕生するまでの歴史的な経緯を振り返ります。
現在の薬機法の枠組みは、1960年(昭和35年)に制定された薬事法・薬剤師法に由来するものが継承されています。しかし、この1960年薬事法が成立するまでには、戦前・戦後を通じた複雑な歴史と激しい業界調整の道のりがありました。
1. 複数の法令から「薬事法」への統合(旧々薬事法の誕生)
1943年(昭和18年)以前、日本の薬事関係法令は「薬品営業並薬品取扱規則」「売薬法」「薬剤師法」など複数の法律に分かれていました。これらが整理統合され、初めて「薬事法」という名称の法律が制定されたのは、戦時中の1943年のことです。
この法律(いわゆる旧々薬事法)は、「薬事衛生の適正を期し国民体力の向上を図り、以て戦争完遂に資せん」という目的を掲げていました。そのため、各種の統制的な規定が多く盛り込まれた内容となっていました。
2. 戦後・GHQ主導によるアメリカ型制度の導入(旧薬事法)
終戦後の占領下において、GHQ(連合国最高司令官総司令部)の指示により民主化が進められました。薬事行政に関しても、統制を撤廃して業界の自主的活動を促すことが急務とされ、1948年(昭和23年)に全面改正が行われました。これが新たな薬事法(旧薬事法)です。
しかし、この旧薬事法の草案はGHQ側が作成・提示したものであり、アメリカの薬事法制を基礎としていました。そのため、日本の実情や法制度のあり方からは大きくかけ離れたものとなっていました。
3. 独立回復と1960年薬事法制定に向けた激しい対立
日本の独立回復後、所管する厚生省は旧薬事法について根本的な改正が必要であると考えていました。また、1950年代半ばになると医薬品の製造・販売をめぐる情勢が変化し、業界団体からも法改正の要望が寄せられるようになります。
ところが、ここから実際の法案作成までは難航を極めました。
- 医薬品の小売販売に関係する団体間において、業者数の増加と競争激化を背景に、それぞれの立場から相反する要望が主張され激しく対立しました。
- 特に、日本薬剤師協会は、薬剤師に対する国民の評価を高め、その使命を明確にするために、独立した「薬剤師法」の制定を強く主張しました。
- これらの対立により、厚生省薬務局の改正作業は数年にわたって停滞を余儀なくされました。
その後、薬事審議会などを舞台とした関係各所の厳しい意見調整を経て、最終的に団体間の妥協が図られました。その結果、1960年についに三度目の全面改正となる新薬事法が成立し、同時に薬剤師に関する規定が分離され「薬剤師法」が単独で制定されることとなりました。
いかがでしたでしょうか。戦時中の統制、占領下での急激な制度変更、そして独立後の実情に合わせた制度の再構築という変遷を経て、現在の薬事制度の基礎が築かれました。
次回の第2回では、この困難な調整を経て制定された1960年当時の薬事法が、具体的にどのような規制内容であったのか、その核心に迫りたいと思います。次回もぜひご期待ください。
📌 ファーマ行政書士事務所では、薬学出身の行政書士が、前職(製薬企業の研究職)での経験を活かし、薬事法務コンサルティングを中心とした専門性の高いサポートを提供しております。薬機法に関するご相談や、医薬品・化粧品ビジネスの許認可、事業承継など、お困りごとがございましたら、お気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール

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1987年塩野義製薬株式会社に入社。2011年まで中央研究所にて、感染症領域および癌・疼痛領域の創薬研究に従事。その間、1992年には、新規β-ラクタム系抗菌薬の創製で博士(薬学)を取得。
1998年から1年間、米国スクリプス研究所に留学。帰国後、分子標的抗がん薬の探索プロジェクトやオピオイド副作用緩和薬の探索プロジェクトを牽引し、開発候補品を創製。2011年10月、シオノギテクノアドバンスリサーチ株式会社に異動となり、新規に創設された化学支援部門を担当し、軌道に乗せる。2013年には塩野義製薬株式会社医薬研究本部に戻り、外部委託管理、契約相談、化学物質管理などの研究支援業務を担当。2020年から3年間、創薬化学研究所のラボマネージャーとして、前記研究支援業務を含む各種ラボマネジメントを担当。2023年3月に定年退職。
2023年4月に、薬事・化学物質管理コンサルティングを行う行政書士として、ファーマ行政書士事務所を開業し、現在に至る。
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