ファーマ行政書士事務所ブログ(薬事17)

2025年5月21日に公布された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(改正法)」。ファーマ行政書士事務所ブログでは、第1回目より、この改正法に基づき、実務に大きな影響を与える改正ポイントを一つずつピックアップして解説しています。
今回は、改正法の中でも流通・小売業界からの関心が高い「一般用医薬品の受渡し」に関する規制緩和について解説します。
これまで「薬剤師または登録販売者の常駐」が必要だった医薬品販売において、販売(専門家による判断・説明)と受渡し(物理的な引渡し)を場所として分離することを認める、画期的な改正です(第29条の5第1項及び第9項関係等)。デジタル技術を活用して、いわゆる「コンビニでの市販薬販売」を事実上可能にする改正とも捉えられがちですが、行政書士の視点からポイントを整理します。
💊 改正の背景:なぜ「受渡し」のルールが変わるのか?
これまで、風邪薬や鎮痛剤などの一般用医薬品(OTC医薬品)を販売するためには、薬局やドラッグストア等の店舗に「薬剤師または登録販売者が常駐していること」が絶対条件でした。
これは、専門家が購入者の状態を確認し、適切な情報提供を行った上で、責任を持って薬を「受渡す」ためです。しかし、このルールには以下の課題がありました。
- 深夜や早朝のアクセス: 薬剤師等がいない時間帯は販売できず、急な体調不良に対応できない。
- 過疎地での購入: ドラッグストアがない地域では、薬を入手すること自体が困難。
今回の改正は、ICT(情報通信技術)の進歩を踏まえ、安全性は確保しつつ、より柔軟に医薬品を購入できるようにすること(アクセスの改善)を目的としています。
🔄 改正のポイント:有資格者が「いなくても」受渡しが可能に?
1. 「販売」と「受渡し」の分離
これまでの薬機法では、薬局やドラッグストア(店舗販売業)において、薬剤師等の専門家が購入者に情報提供を行い、その場で薬を手渡すことが基本でした。
今回の改正により、以下のプロセスが可能になります。
- 相談・販売(遠隔): 購入者は自宅や外出先から、テレビ電話等のICTを用いて薬局の薬剤師に相談し、購入手続きを行います。
- 受渡し(別店舗): 購入した薬を、自宅近くの「登録受渡店舗」(コンビニエンスストアや駅の宅配ロッカー設置所などが想定されます)で受け取ることができます。
つまり、「薬剤師がいない店舗」であっても、事前の手続きが済んでいる薬の「受渡し」だけなら可能になるという制度です。
2. 新設される許可区分「登録受渡店舗」
この仕組みを実現するために、新たに「登録受渡店舗」という登録制度が創設されました。ここが行政書士として注目すべき実務ポイントです。
薬局や店舗販売業者以外の者が、業としてこの「受渡し」を行う場合、店舗ごとに都道府県知事の登録を受けなければなりません。
【登録の要件と体制】
条文(第29条の5〜10関連)によると、登録を受けるためには以下の要件等を満たす必要があります。
- 構造設備の基準: 医薬品を適切に保管・管理できる設備(鍵付きの保管庫や、誤渡しを防止するシステム等)を備えていること。
- 責任者の設置: 店舗ごとに「登録受渡店舗責任者」を置く必要があります。
- 管理体制: 委託元の薬局・ドラッグストアと連携し、適切な受渡し手順(マニュアル)を整備すること。
💬 ビジネスチャンスと施行時期
この改正は、薬局にとっては「商圏の拡大(遠隔地の患者にも薬を届けられる)」、異業種(コンビニ、物流、駅ビル等)にとっては「集客と手数料ビジネス」という双方にメリットがある仕組みです。
施行時期については、公布(2025年5月21日)から2年以内の政令で定める日とされています。つまり、2027年5月までにはこの新制度がスタートします。
✨ まとめ:参入には「登録」が必須
「明日からコンビニで薬が買える!」と思われがちですが、あくまで「都道府県知事の登録」を受けた店舗だけがこの業務を行えます。
新規参入を検討されている事業者様は、設備の改修や責任者の確保、そして登録申請の準備が必要になります。
📌 ファーマ行政書士事務所では、薬機法改正対応や薬事に関する法令対応についてのご相談を承っています。この新設される「登録受渡店舗」の登録申請支援や、委託元となる薬局様との契約書作成(業務提携のサポート)など、新制度に対応したコンサルティングも行っております。
※本記事は、2026年5月21日に公布された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第37号)の内容及びそれによって予測される影響について記述しています。法解釈を含む内容については、個別の事案やその後の解釈等により異なる場合があります。正確な情報は必ずご自身でご確認いただくようお願いいたします。
投稿者プロフィール

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1987年塩野義製薬株式会社に入社。2011年まで中央研究所にて、感染症領域および癌・疼痛領域の創薬研究に従事。その間、1992年には、新規β-ラクタム系抗菌薬の創製で博士(薬学)を取得。
1998年から1年間、米国スクリプス研究所に留学。帰国後、分子標的抗がん薬の探索プロジェクトやオピオイド副作用緩和薬の探索プロジェクトを牽引し、開発候補品を創製。2011年10月、シオノギテクノアドバンスリサーチ株式会社に異動となり、新規に創設された化学支援部門を担当し、軌道に乗せる。2013年には塩野義製薬株式会社医薬研究本部に戻り、外部委託管理、契約相談、化学物質管理などの研究支援業務を担当。2020年から3年間、創薬化学研究所のラボマネージャーとして、前記研究支援業務を含む各種ラボマネジメントを担当。2023年3月に定年退職。
2023年4月に、薬事・化学物質管理コンサルティングを行う行政書士として、ファーマ行政書士事務所を開業し、現在に至る。
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