ファーマ行政書士事務所ブログ(薬事14)

2025年5月21日に公布された薬機法改正法について解説する本シリーズ、第14弾となります。
これまでは製造販売業者(メーカー)等の視点での解説が中心でしたが、今回の改正法には、地域の医療インフラである「薬局」の業務を大きく変える規定も盛り込まれています。
その一つが、「調剤業務の一部の外部委託」の解禁です。 これまでは原則として、処方箋を受け付けた薬局内で調剤を完結させる必要がありましたが、今回の改正で、一定の条件の下、他の薬局へ業務の一部を委託することが法律上認められることになりました。
今回は、新設された第9条の5を中心に、この制度の概要を解説します。
💊 改正のポイント:調剤業務の「外部委託」が可能に(法第9条の5)
今回の改正により、薬局開設者は、薬剤師による対人業務(服薬指導等)の質を向上させるため、調剤業務の一部を他の薬局に委託することが可能となります。
1. 根拠条文(第9条の5 新設)
改正法では、以下のように規定されています。
(調剤の業務の委託) 第九条の五 薬局開設者は、薬剤及び医薬品の適正な使用に必要な情報の提供及び薬学的知見に基づく指導の質の向上を図るために調剤の業務の効率化を行う必要がある場合は、調剤の業務のうち当該業務に著しい影響を与えない定型的な業務として政令で定める業務について、厚生労働省令で定める要件を備えている薬局の薬局開設者に委託することができる。
2. どんな業務が委託できるのか?
条文上、「当該業務に著しい影響を与えない定型的な業務」とされており、具体的な範囲は今後政令で定められます。 一般的には、機械化等により効率化が可能な「一包化」などの対物業務が対象になると想定されています。
3. 委託先の要件は?
委託先となる薬局は、無条件ではなく「厚生労働省令で定める要件を備えている薬局」でなければなりません。 これまでの議論や法の趣旨から、トレーサビリティ(追跡可能性)の確保や、適切な品質管理体制(GQPのような考え方)が求められることになるでしょう。
🔄 改正の背景:「対物」から「対人」へ
なぜ今、このような規制緩和が行われるのでしょうか。 その最大の目的は、条文にもある通り、「指導の質の向上」にあります。
少子高齢化が進む中、薬剤師には、単に薬を揃えるだけでなく、患者さんの残薬確認、ポリファーマシー(多剤併用)対策、在宅医療への参画といった「対人業務」への注力が強く求められています。 今回の改正は、一包化などの時間がかかる「対物業務」を外部の機能的な薬局へ委託(アウトソーシング)することを可能にし、薬剤師が患者さんと向き合う時間を確保するための環境整備と言えます。
💬 実務への影響
この改正により、薬局の業務形態には以下のような変化が予想されます。
1. 薬局間の連携・機能分化
「対人業務に特化した地域密着型薬局」と、高度な調剤機器を備えて委託を受ける「調剤センター的機能を持つ薬局」といった機能分化が進む可能性があります。
2. 業務効率化
店舗スペースや設備投資の制約がある中小薬局でも、委託を活用することで効率的な業務運営が可能になります。
✨ まとめ
第14弾では、2025年薬機法改正による「調剤業務の一部外部委託」について解説しました。
- 改正条文: 薬機法 第9条の5(新設)
- 内容: 「定型的な調剤業務」を、「要件を満たす他の薬局」へ委託可能に。
- 目的: 対物業務を効率化し、薬剤師の対人業務を充実させること。
なお、この規定は、公布の日(令和7年5月21日)から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日に施行される予定です。 具体的な「政令で定める業務」や「省令で定める要件」については、今後のパブリックコメントや通知を注視する必要があります。
📌 ファーマ行政書士事務所では、薬機法改正対応や薬事に関する法令対応についてのご相談を承っています。
※本記事は、2026年5月21日に公布された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第37号)の内容及びそれによって予測される影響について記述しています。法解釈を含む内容については、個別の事案やその後の解釈等により異なる場合があります。正確な情報は必ずご自身でご確認いただくようお願いいたします。
投稿者プロフィール

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1987年塩野義製薬株式会社に入社。2011年まで中央研究所にて、感染症領域および癌・疼痛領域の創薬研究に従事。その間、1992年には、新規β-ラクタム系抗菌薬の創製で博士(薬学)を取得。
1998年から1年間、米国スクリプス研究所に留学。帰国後、分子標的抗がん薬の探索プロジェクトやオピオイド副作用緩和薬の探索プロジェクトを牽引し、開発候補品を創製。2011年10月、シオノギテクノアドバンスリサーチ株式会社に異動となり、新規に創設された化学支援部門を担当し、軌道に乗せる。2013年には塩野義製薬株式会社医薬研究本部に戻り、外部委託管理、契約相談、化学物質管理などの研究支援業務を担当。2020年から3年間、創薬化学研究所のラボマネージャーとして、前記研究支援業務を含む各種ラボマネジメントを担当。2023年3月に定年退職。
2023年4月に、薬事・化学物質管理コンサルティングを行う行政書士として、ファーマ行政書士事務所を開業し、現在に至る。
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